細菌検査ナビ

細菌検査キットの役割やメリット/使用上の注意点について

BACcT S(バクットエス)
ここでは食品衛生検査の細菌検査等で使用される「細菌検査キット」についての基本的な情報から使用方法、使用する上での注意点などについて詳しく解説します。
目次

細菌検査キットとは

食品の細菌(微生物)検査の工程では、対象となる食品(この場合では固形を想定)を切り刻み、計量後に希釈液を入れ、すり潰しをおこないます。そこで出来上がった試料液を菌種毎の培地に滴下し、培養。その培養した培地を観察したのちに、使用した培地を滅菌(殺菌)します。

この一連の流れで必要な機器には以下のものが挙げられます。

  • はかり
  • すり潰し器
  • ピペット
  • 培養器
  • ルーペ
  • 滅菌器(殺菌器)

これらの機器をセット化し販売されているのが「細菌検査キット(当社製品名:食品衛生検査器BACcT – バクット)」です。

細菌検査キットでわかること・わからないこと

細菌検査キットでは、食品中に存在する細菌(微生物)の定量(および定性)検査をおこなうことが出来ます。

対象の細菌(微生物)としては、

  • 一般生菌
  • 大腸菌群
  • 大腸菌
  • 黄色ブドウ球菌

などの汚染指標菌を中心に、その他には

  • 乳酸菌
  • 真菌(カビ酵母)
  • サルモネラ菌

などの検査ができます。

なお、これらの検査の際には各々の菌種用の培地を使用します。

※定量検査とは、食品検体中の調査対象となる菌が存在する量を調べる検査。
※定性検査とは、食品検体中の調査対象となる菌の存在の有無を調べる検査(0=陰性、1~=陽性)。
※ノロやコロナなどのウイルスは確認対象が細菌(微生物)ですので確認できません。

細菌検査キットのメリット・デメリット

細菌検査キットを導入をした場合に考えられるメリットとデメリットについて解説します。

メリット

細菌検査キットのメリットとしては、初期導入時コストが低い、省スペース設計である、検査手順が簡単、という3点です。

初期導入時のコストが低い

標準法(寒天培地を使用する検査方法)では、付帯設備を合わせて300~500万円ほど掛かります。

当社の食品衛生検査器BACcTシリーズでは、「持ち運び可能なAir BACcT(エアー・バクット)」、「設置型のBACcT S(バクット・エス)」、「フルスペック型のBACcT COR(バクット・コル)」の3機種がラインアップしており、初期導入に掛かるコストは標準法と比べて1/10~1/5に抑えることができます。

どの細菌検査キット(BACcT)を導入したらいいのかわからない場合は、お客様が実施を予定している検査数や検査計画にあわせ、担当者が無料にて機種選定のアドバイスをいたします。また訪問でのデモンストレーションサービスもございますので、お気軽にお問い合わせください。

省スペース設計

標準法では、使用する機器が大型であり、それに伴いある程度の規模の設置スペースを用意する必要があります。

BACcTでは、事務机一個分から会議机(幅210cmほど)一個分ほどのスペースがあれば設置が可能です。

検査手順が簡単

「誰でもどこでも簡単に正確な検査ができる」をコンセプトにしており、操作が簡単な機器類とは別に、滅菌済および調整済みの検査備品を提供しております。

お客様は検査したい食品検体をご用意いただき、検査備品さえ揃っていればすぐに検査ができます。

標準法では、検査備品を事前に滅菌処理を行うほか、培地に関しては濃度調製するなどの経験が必要ですが、BACcTの検査備品は全て滅菌・調製済みですのですぐにお使いいただけます。また、BACcTで採用している培地である3M™ペトリフィルム培地™は既に調製済みの培地であり、お客様で改めて調製する必要もありません。

これらの事から、当社の製品をご使用いただければ、検査備品の滅菌不足や培地調製ミスによる人的エラーを起こすことはありません。よって、検査手順さえ間違わなければ、どなたが検査を実施しても検査結果に大きく差異が出ることがないことも大きなメリットです。

また、検査結果の正確性を上げているポイントとして、3M™ペトリフィルム培地™が挙げられます。この培地は世界65ヵ国以上で使用され、AOAC※などの国際認証機関で認証され、そのほとんどの製品が妥当性確認されております。日本国内においては、「食品衛生検査指針 微生物編 改定第2版2018」に収載されております。

※※AOAC=正式名“AOAC INTERNATIONAL”は、分析科学分野で分析法のバリデーション、分析の実務、精度管理等に携わる官民の科学者、行政官、その他組織から構成されており、米国を中心に約90ヶ国、3,000名以上の会員がいる団体です。

以上、これらの検査備品をご使用する事で、気を煩わす事前作業を行うことなく、検査に集中でき、安定した検査実施が可能となります。

なお、BACcTを導入し、自社内で検査室を設けて食品微生物検査するメリットとしては、検査判定までの時間の短縮、その結果を踏まえた改善活動へのスムーズな移行です。

外部検査機関に検査を委託した際は平均7~10営業日を要しますので、結果が返ってくるまで何も行動に移す事ができません。検査結果がすぐにわかる、改善活動で大きな差が生まれるポイントです。

デメリット

標準法などでは器具類を洗浄・滅菌し再利用できますが、当社提供の検査備品は調製および滅菌済のディスポーザブルタイプ(使い捨て)となっております。希釈液などは自製しております※。

よって、自ら調製や滅菌をする必要がない分手軽に使用できるのですが、その分、検査1検体に対して備品がコスト高になってしまいます。

※自社で器具類を洗浄・滅菌し再利用、希釈液などは自製する事により備品コストは削減できますが、器具類の滅菌の状態や希釈液などの調製精度について、自ら客観的に評価しなければなりません。

細菌検査キットの注意点

細菌検査キットは誰でも使用できるよう使用方法も簡単に設計されていますが、使用する上で注意すべき点がいくつかあります。

検査環境

検査する環境はできる限り衛生的な環境下※で実施する事が望ましいです。

※「埃っぽくない」「人通りが多くない」「整理整頓・清掃が行き届いた」環境

BACcTのSおよびCORについては、クリーンベンチ(ゴミやホコリ、浮遊微生物などの混入(コンタミネーション)を防ぐために一定の清浄度レベルになるように管理された囲いの付いた作業台)の代わりとなるダストシールド(S)およびクリーンブース(COR)が付属されております。

Airの場合は付属しておらず、オープンスペースでの検査となります。よって使用する時の環境によっては必要となりますので、Airご購入のお客様向けに別途ダストシールドおよびクリーンブースを販売しております。

エアコン使用時、検査を行う場所へのダイレクトな送風は、舞ったほこりなどが検査に影響する可能性がありますので、気を付ける必要があります。

培養器

寒冷地での使用で培養器が正常稼働しない

培養器は使用室内温度として10℃~40℃としており、10℃を下回る寒冷地での使用の場合、設定温

度まで温まらない、起動しないという症状が現れます。

<事例>
業務終了後の室温が2~5℃となるかなり冷えた環境。培養器をOFFからONにしても起動 しない。
→その後培養器を室温25℃程環境下で温める事で起動可能に(ONにする前に結露に注意)。

培養器のフィルター清掃の必要性

フィルターをこまめに清掃しないと設定温度に到達しない、または温度のブレ幅が大きくなることがあります。

培養器と壁との間隔

一定の間隔を開けないと吸排気効率が落ち、設定温度に到達しない、または温度のブレ幅が大きくなることがあります。

検査

検査をする上での注意点としては、検査室では菌を扱っている事から、「検査室への入室制限(検査室からの菌の流出防止上バイオハザードの観点から)」が必要となります。

また、精度の高い検査を行う為にも検査員から菌を検体に付着させない様、検査前の手洗い、帽子・マスク・手袋・白衣の着用が必須となります。

培養後の培地を観察した後は、ステリライザー(殺菌器)またはオートクレーブ(滅菌器)を使い、培地を殺菌滅菌処理をおこない廃棄する必要があります。

どこでどのようにして入手(購入)するのか

BACcTはインターネットでの販売および店頭販売はしておりません。販売ルートなどについては当社または営業担当者までお問い合わせください。

お問い合わせはこちら

細菌検査キットの使い方(流れ)

ご導入時には、BACcTの開梱設置を兼ね営業担当者が訪問し、使い方(検査手順)の説明を実施いたします(所要時間は1.5~2時間程度)。

検査にあたってのマニュアル冊子、検査手順の動画も用意しており、お客様での検査の見直しも容易です。

その後の運用にあたっては、定期的な営業担当者の訪問によるサポート(訪問時以外での対応では、携帯及びメールでのサポート)、お客様相談窓口での電話対応サポートを実施しております。

検査の流れ(Air BACcTおよびBACcT Sを使用した場合)

  1. 検査検体をナイフ・ピンセット・サンプリングシート(やわらかい検体の場合はスプーン)を用い、ホモジバッグ(サンプル袋)に10g※(±0.1g)はかり入れ、あわせてデリューションP90cc※(希釈液=滅菌リン酸緩衝液90cc)も入れる。※食品検体量が5gの場合は、デリューションP45ccを使用します。
  2. 検体と希釈液が入ったホモジバッグをすり潰し器(Airではホモジマッシャー、Sではコロコロマッシャー)で30~60秒すり潰す。
    ※ここで出来上がった試料液は、検体10gに対して希釈液90ccで希釈した事になり、1gに対して1/10に希釈した事になる(通称10倍希釈液)
  3. ②で出来た試料液(10倍希釈液)をフィルム培地(培地)にバクットピペットで1ml滴下します(一つの倍率ごとに2枚の培地を使用する2枚法を推奨しております)。
    状況に応じ10倍希釈液を基にデリューションP9cc(希釈液9cc)を用い段階希釈※をおこない、各倍率の希釈液をバクットピペットで1ml滴下します。
    ※標準的な希釈としては「10倍」「100倍」「1000倍」の3段階希釈をおこないます。
  4. 滴下された培地を培養器(35℃設定)に入れて培養します。
    ※一般生菌=48時間±3時間、大腸菌群=24時間±2時間
  5. 各培地の培養時間を経て培養器から取り出し、培地上のコロニー(菌)をカウントします。
  6. カウントした結果を記録用紙などに記入し、管理します。
  7. 観察終了後の培地をステリライザー(殺菌器)で1時間殺菌し廃棄します。