今回の動画はBACcTチャンネル日本細菌検査の野﨑が株式会社八天堂の三代目社長の森光孝雅さんにインタビュー形式で品質へのこだわりとくりーむパン誕生の秘話に迫ります。八天堂を代表するくりーむパンはいったいどの様にして生まれたのか?いよいよ3回に渡ってお届けした内容も今回が最後です。
動画は主に5つの内容で構成されています 。
- くりーむパン誕生秘話
- 海外展開について
- シンガポールを選んだ理由
- 品質管理や食品衛生の考え方
- 日本細菌検査との関係性
では順番に見ていきましょう。
くりーむパン誕生秘話
世の中のイノベーションで生まれてくるものは必ずスタンダード×スタンダードです。つまり奇をてらったものではありません。ある一定期間お客様にスタンダードとして認められたものであることが大切です。
ではパンのスタンダードとは何か?あんパン、クリームパン、メロンパンです。それに何を掛け合わせるのかを考える必要がありました。それを『食感』だと考えたのです。
クリームパン×食感は市場に出回っていませんでした。しかし、食感を商品にするのが大変だったのです。というのも食感を形にするのには問題が2つありました。
・生クリームをパンに入れると破れて飛び出してしまうこと
・生クリームは要冷蔵(5℃)を維持するためパン生地が固くなってしまうこと
この2つをクリアすれば、どこにもない口どけの良いパンができるのです。ヒントはすぐ近くにありました。たとえば、いちごのショートケーキは冷蔵庫に入れても固くなりませんよね。
つまり強力粉がメインのパンに薄力粉の比率を増やしていくことが解決策だったのです。薄力粉の利用が2つの問題をクリアしてくれました。また空輸が新商品の発明を助けたのです。というのも広島県三原市から東京に出荷するのも空輸しかなかったため、半日はかかりました。時間が経てばクリームの水分が生地に移行し、どんどん冷たく柔らかくなっていきます。結果的に冷えてもおいしいくりーむパンが完成したのです。
さらにお客様から箱で売っていないの?と言われたことも八天堂としてはラッキーでした。これまでパンというのはビニール袋や紙袋で売っていることが当たり前でした。この時に手土産として購入を考えていることに気づかせてもらったのです。今でも手土産として購入されるお客様の方が多いです。
こうして今の八天堂を代表するくりーむパンが完成しました。結果、お客様のおかげで15年間もずっとニッチな市場で安定した売り上げを生むことができました。
海外展開について
海外に行くときもスローガンを掲げました。『ローリスクローリターン』です。非常に現実的な足元を見たものにしました。
理由は海外に行くというのは相当なエネルギーを要するからです。失敗して撤退すると次に行くのは、その何倍もの労力を要します。ですから何があっても撤退せず粘り強くする。 なぜなら20年後30年後も未来ある企業として存在するために強い信念を持っているからです。その結果シンガポールのみ直営で、あとは現地の方にやっていただくことで海外も展開することができました。まさにアライアンス(一緒にやること。詳しくは#2くりーむパンの八天堂!品質へのこだわりとくりーむパン誕生秘話をご覧ください)です。その中で、ムスリム市場に進出するには、ハラール認証(イスラム法に従った製品・サービスの適合を示す認証制度)を受けなくてはいけませんでした。これを自社のみで行うことはスローガンに反します。というのも時間もリスクもかかってしまうことになるからです。そこで同じ志とかに共感した方々とパートナーを組んでやっていこうと考えました。その過程で現地に根をはり企業として成り立っており、日本から移動した人を見つけることができたのです。結果的に大きな市場があるところに展開できました。
シンガポールを選んだ理由
理由は2つです。1つ目は政治的な制約を受けないことで全世界からいろんな文化が集まってきていることです。入りやすく挑戦しやすいと言えます。またシンガポールを拠点にして他のアジア圏に売って出やすいのです。
2つ目は海外にはクリームパンという商品の概念がなかったことです。最初の購入者は現地の日本人の方が中心でした。その人たちがゼロから現地の方を巻き込みながら広めてくださったのです。
今は現地の人たちに合ったフレーバーも含めた商品開発を進めることができたので、ローカライズ版の販売も行えています。
品質管理や食品衛生の考え方
経営理念『良い品 良い人 良い会社つくり』にもあるように、まず『良い品』がなければいけません。八天堂は品質を第一に考えているのです。そのためには、品質や量のレベルを上げていく必要があります。結果、日本細菌検査との付き合いが始まりました。
今でもお客様に『安心安全第一で召し上がっていただけるように』ということを常に心がけています。
日本細菌検査との関係性
安心安全の思いが一番強いです。
そうすると、企業の規模が大きくなり成長しているので、機材の充実が必要になってきます。より品質のレベルを高めていかないということで、日本細菌検査の指導のもと微生物検査や食中毒検査(BACcT-微生物検査キット一式の利用)を行っています。
最近では、さらに増設してやっていこうとしています。海外展開を充実していく上で、HACCP *とISO*には力を入れて取り組んでいます。しかし、これらはあくまで資格です。運営できなければ意味がありません。品質づくりが目的であるので、それをしっかり現場に落とし込んでいます。昨日までが良くても今日が悪ければ意味がありません。
微生物検査(BACcT)があってこその商品開発であったり営業企画であったりするのです。それが我々の一丁目一番地です。
*HACCPとは、「衛生管理手法」のことです。 原材料の受け入れから製品になるまで(食事提供をするまで)の各工程において、あらかじめ「微生物による汚染」や「金属の混入」などの危害を予測。 |
*ISOとは、製品およびマネジメントシステム(ルールや体系などの仕組み)の国際規格を制定する「国際標準化機構」のこと。 |
いかがだったでしょうか?安心安全という目に見えない地道な努力を積み重ねてきた八天堂さんの思いが海外展開につながっています。日本細菌検査は微生物検査キット(BACcT)とともに八天堂さんの未来を応援しています。
次回は、八天堂さんの品質管理を現場の責任者の方にインタビューする企画になっています。微生物検査キット(BACcT)の扱い方だけでなく使用している場面も解説していますので、気になる方はぜひ。
今回の動画はこちらです。