
今回の動画はBACcTチャンネル日本細菌検査の髙橋がユーアールエー株式会社の製造本部本部長である井上さんにインタビュー形式で、ビール工場の衛生管理に迫ります。
淡路島の自然とともに育まれるクラフトビール──それが「淡路ビール」です。1998年、明石海峡大橋の開通とともに誕生したこのビールは、無濾過・非加熱というこだわりの製法で、酵母の生きた“本物の生ビール”を届け続けています。今回は、製造現場を訪ね、仕込みから瓶詰め、出荷に至るまでの工程と、徹底された衛生管理の取り組みに迫りました。
動画は主に4つの内容で構成されています。
① 入室準備
② 仕込み室~貯蔵タンク
③ 瓶詰め工程
④ ビールではめずらしい冷蔵保存、出荷工程
では順番に見ていきましょう。
①入室準備

入室前には、手をかざすだけで作動する自動手洗い機を使用し、手洗い手順を示したマニュアルが掲示されています。洗浄後はペーパータオルで水分を拭き取り、消毒を実施。その後、エアシャワーで衣服に付着したほこりや汚れを除去するなど、衛生管理の基本を丁寧に実践しています。
また、淡路ビールは1998年4月、明石海峡大橋の開通と同時に醸造をスタート。約7年後には生産量の増加に対応するため、瓶詰めの自動機を導入し、工場棟を増築。設備の拡充とともに、衛生管理体制も強化されてきました。
②仕込み室~貯蔵タンク

淡路ビール工場では、徹底した温度管理と衛生対策、そして“音”を活かした独自の製法によって、唯一無二のクラフトビールを生み出しています。仕込みから貯蔵までの各工程において、品質を左右する温度管理と洗浄作業を徹底。さらに、淡路島の自然音を酵母に聴かせる「アイランド製法」によって、ビールに深みと個性を与えています。

仕込み室には4本のタンクが並び、温水タンク、左から麦汁のろ過タンク、中央の仕込みタンク、そして右端のワールプール(遠心分離機)へと工程が進みます。1日1仕込みが限界で、朝6時から夕方4時までかけて丁寧に作業が行われます。

仕込み後の原液は、大小14基の発酵・貯蔵タンクへとホースで移送。温度管理は自動制御され、毎日記録を取りながら厳密にチェックされています。床面には製品が付着しないよう配慮されており、月1回の殺菌洗浄も実施。
配管やホースはすべてCIP(定置洗浄)方式で洗浄され、衛生管理が徹底されています。
そして最大の特徴が「アイランド製法」。淡路島の海や川の音を酵母に聴かせることで、発酵を穏やかに促し、味わい深いビールに仕上げるという独自のアプローチです。この製法は、井上部長の周囲でも他に例がないとのことでした。
淡路ビール工場は、クラフトビールの味わいを支える技術と衛生管理、そして自然との調和を大切にする姿勢が融合した現場なのです。
③瓶詰め工程

淡路ビール工場では、瓶詰めから出荷までのすべての工程において、品質と衛生を守るための細やかな工夫が徹底されています。
クラフトビールの魅力は味わいだけでなく、製造現場の丁寧な仕事に支えられています。淡路ビールでは、洗浄・充填・検品・出荷の各工程で、5Sや目視チェック、定期的な殺菌作業を通じて、安心・安全な製品づくりを実現しています。
包装室では、外部から購入した滅菌済みの330mL小瓶をターンテーブルに並べ、コンベヤーで流しながら賞味期限の印字とラベル貼付を行います。その後、瓶内のホコリを水で洗い流し、薬剤を使わずに清潔を保つ工夫がなされています。充填工程では、1日1〜2種類のビールを製造し、最大で1日4,000本を仕上げることも。王冠で打栓された製品は、入味(いりみ)と呼ばれる基準サンプルと比較しながら、人の目で最終チェックを実施。内容量が不足しているものは弾かれ、品質のばらつきを防いでいます。また、作業終了後には毎回の洗浄と、月1回の殺菌作業を実施。工場内は5Sが徹底されており、必要な機材や備品のみが整然と配置されています。品質管理担当者による月1回のチェックも行われ、衛生と品質の両面で高い基準が保たれています。
④ビールではめずらしい冷蔵保存、出荷工程

淡路ビールは、酵母が生きたまま瓶に詰められる“本物の生ビール”として、冷蔵保存と丁寧な出荷体制を徹底しています。
一般的なビールはろ過や熱処理(二次殺菌)によって酵母を取り除いていますが、淡路ビールは無濾過・非加熱のため、瓶の中に酵母がそのまま残っています。そのため、品質を保つには冷蔵保存が不可欠なのです。
淡路ビールは、製造後すぐに冷蔵保存され、島内配送でも冷蔵車を使用して運ばれます。出荷工程では、取引先ごとにラベルを付けて仕分けし、丁寧に振り分けてから出荷。ここで初めて、ビールが消費者のもとへと旅立ちます。
このような徹底した温度管理と出荷体制は、酵母の生きた風味をそのまま届けるためのこだわりです。冷蔵保存の徹底は、クラフトビール業界でも珍しく、淡路ビールの品質への強い信念が感じられます。
淡路ビールは、酵母の力を活かした“生きたビール”を届けるために、冷蔵保存と丁寧な出荷を徹底しています。これは、品質と信頼を守るための譲れない姿勢です。
工場長からメッセージ
「淡路島で26年間、ビールづくりを続けてきました。島レモンなど淡路島の素材を活かしたビールを造っています。淡路島にお越しの際は、ぜひ淡路ビールを味わってみてください。」
1日1仕込みという丁寧な作業、CIP洗浄や月1回の殺菌作業、冷蔵保存の徹底など、すべては「安心して美味しいビールを届けたい」という想いの表れは届きましたでしょうか?衛生管理に携わる皆さまにとっても、ここでの取り組みが、品質と信頼を守るためのヒントに繋がれば幸いです。
今回の動画はこちらです。