【食品衛生】冷凍食品を製造する工場の食品微生物検査の取り組みについてお話を聞きました。

今回の動画はBACcTチャンネル日本細菌検査の野﨑と田中が株式会社フリゴの食品部品質管理課の金本さんにインタビュー形式で、フリゴの食品衛生の取り組みに迫ります。 

全国の食品メーカーで品質管理に携わる皆様とお話をする中で、「他社がどのように衛生管理に取り組んでいるのか、なかなか情報が手に入らない」という声を多く耳にします。 

弊社では、そうした“現場の悩み”に応えるべく、食品衛生の実践事例を発信し、知見の共有を進めています。本記事を通じて、御社の品質管理に少しでも新たな気づきが生まれ、現場力向上のヒントとなれば幸いです。 

動画は主に4つの内容で構成されています。 

①微生物検査について
②日本細菌検査との関係性
③検査結果が陽性だった時のアクション
④人手不足という課題について

では順番に見ていきましょう。 

①微生物検査について

株式会社フリゴでは、冷凍フルーツや冷凍野菜などを対象に、微生物検査を継続的に実施しています。検査は弊社の田中が12年間担当しており、最近では食中毒菌「サルモネラ」の検査項目が追加されるなど、品目の拡充も進んでいます。 

かつては和歌山の加工場で寒天培地による検査を行っていましたが、事業拡大に伴い大阪に本社を構えた際、各工場に検査室を設置。検査量の増加に対応するため、田中氏から乾式培地「ペトリフィルム」の導入提案がありました。 

メーカーとの同行訪問も経て、検査手法や指導体制は社内で整備され、寒天培地から乾式培地への切り替えは約12年前に完了しています。この切り替えにより、検査の効率化・標準化が進み、衛生管理の定量化・定質化にもつながりました。 

ペトリフィルムは、操作性が高く、検査経験のないスタッフでも扱いやすいことから、現場での自走型衛生管理の実現に貢献しています。 

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日本細菌検査との関係性

食品衛生の現場では、検査の精度と効率が事業の信頼性を左右します。株式会社フリゴでは、従来の寒天培地による微生物検査に課題を感じていました。寒天培地は、専門的な訓練を受けた検査員でなければ扱いが難しく、保管スペースの確保にも苦労が伴います。 

そこで、弊社は、検査工程の簡素化と標準化を実現するために乾式培地(ペトリフィルム)の導入を提案。これにより、検査員が一定の訓練を受けるだけで、均一な品質での検査が可能となり、現場の自走型衛生管理体制の構築が進みました。

現場での判断支援と併走体制

検査現場では、普段出ない菌(例:大腸菌)が検出された際に、陽性か陰性かの判断に迷うケースがあります。コロニーの反応が曖昧な場合、弊社の田中が技術的な判断支援を行い、品質管理部と連携して汚染源の特定に向けた調査を進めます。 

  • 田中は検査部で5年間の実務経験を積んだ後、営業部へ異動
  • 営業職でありながら微生物検査の専門知識を保持
  • 現場での「困り感」に寄り添い、技術と対話の両面から支援

このような併走型の支援体制により、フリゴ様の品質管理部が汚染源の特定と再発防止策の立案を迅速に進められる環境が整っています。

検査結果が陽性だった時のアクション

検査結果が陽性だった場合、株式会社フリゴでは「検査工程の正確性」か「現場での汚染」のどちらに起因するかを見極めることが最優先課題となります。

検査精度と二次汚染のリスク評価

検査の練度が低い場合、検査工程自体が汚染源となる可能性もあるため、以下のような対応が取られます。

  • 汚染源の仮定とふき取り検査の実施 
    金本氏が現場に立ち会い、工程漏れがないかを二重チェック 
  • 検査結果の技術的判断支援
    弊社の田中が結果を受けて、陽性反応の妥当性を検証
  • 清掃の再評価と改善提案
    二次汚染の可能性がある場合、清掃手順や使用薬剤の見直しを実施 

冷凍庫など特殊環境での洗浄課題と対応

凍庫内では水や一般的な洗剤が使えないため、清掃方法に行き詰まるケースがあります。フリゴ様からのご相談に対し、弊社では以下のような対応を行っています。 

  • 洗剤メーカーとの連携による現場対応
    弊社がタイアップしている洗剤メーカーと協力し、現場に出向いて洗浄方法を検討 
  • アルコール濃度の最適化
    通常75%のアルコールでは凍結してしまうため、55%のアルコールを使用することで冷凍庫内でも効果的な消毒が可能に 

このような対応により、ATP検査やふき取り検査での数値改善を図り、衛生状態の安定化を支援しています。 

検査後の衛生維持と商品提案までの包括支援

弊社の支援は単なる検査技術の提供にとどまりません。陽性反応後の衛生維持、汚染源の特定、洗浄方法の改善、さらにはフリゴ様の現場に合った商品提案までを一貫して行っています。

  • 困りごとのヒアリングと商品選定
    現場の課題を丁寧に聞き取り、最適な洗浄剤や検査資材をご提案
  • 食の安全を守るための併走型支援
    微生物検査の精度向上と衛生管理の実践を両立させることで、フリゴ様の品質保証体制を強化 

人手不足という課題について

人手不足は、品質管理・現場運営の両面で深刻な課題です。特に交通の便が悪い僻地工場では、採用難に加えて定着率の低さも問題となりがちです。

外国人従業員とのコミュニケーション課題と教育強化

金本氏の言葉にもあるように、外国人従業員の雇用が進む中で、意思疎通の難しさが現場の衛生管理にも影響を及ぼします。そこで、以下のような教育強化が求められています。

  • 母国語や視覚的教材を活用した教育 
    動画マニュアルやピクトグラムを使い、言語の壁を越えた理解促進 
  • 衛生ルールの背景説明
    「なぜこの作業が必要か」を伝えることで、文化の違いを乗り越える教育設計 
  • 繰り返し学習できる体制
    時間に余裕があるときに復習できる教材や仕組みの整備 

乾式培地の導入による検査時間の短縮と教育時間の創出

乾式培地(例:コンパクトドライ、MC-Media Padなど)を導入することで、従来の寒天培地に比べて検査準備・培養時間が大幅に短縮されます。 

  • 培地調製が不要:パッケージを開けてすぐ使える
  • 省スペース・省資材:器具やゴミの削減にも貢献
  • 判定が簡単:色やコロニーの識別がしやすく、教育にも活用可能 

この効率化によって、検査担当者の残業が減り、空いた時間を外国人従業員への教育に充てることが可能になっています。 

衛生管理を共に担う体制づくりへ

金本氏が語るように、外国人従業員との距離を縮め、衛生管理を「一緒に取り組む」体制へと進化させることが、現場力の底上げにつながります。 

  • 教育と検査の両輪で現場力強化
    検査効率化 → 教育時間創出 → 理解度向上 → 衛生管理の質向上 
  • 多国籍チームでの衛生文化の共有
    異なる文化背景を持つ従業員が、共通の衛生意識を持つことで、現場の一体感が生まれる。 

フリゴ様における食品管理の取り組みを紐解くことで、弊社の併走の仕方も、皆さまにお届けできたのではないかと思います。日々の衛生管理の中で生まれる小さな疑問にも、丁寧にお応えしてまいります。ぜひ、お気軽にご連絡ください。 

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