【70年の歴史を持つ製麺所】39歳社長の事業承継と製麺業界のこれから【太陽製麺所/経営者インタビュー・後編】 

【70年の歴史を持つ製麺所】39歳社長の事業承継と製麺業界のこれから【太陽製麺所/経営者インタビュー・後編】

今回の動画はBACcTチャンネル日本細菌検査の野﨑が太陽製麺所株式会社の代表取締役の王さんにインタビュー形式で、企業の特徴について迫ります。 

製麺所の現場は、日々の安定供給と品質維持を求められる一方で、跡継ぎ不足や設備老朽化など、静かに進む構造的な課題を抱えています。今回の動画では、そんな業界の中で事業を継承し、コロナ禍を乗り越え、これからの経営環境に向き合う太陽製麺所・王社長の歩みを追いました。 

動画は主に3つの内容で構成されています。 

①事業継承に至るまで 
②事業継承後 
③これからの経営環境について 

では順番に見ていきましょう。 

事業継承に至るまで 

太陽製麺所_事業継承に至るまで

幼い頃から“製麺所の空気”の中で育ってきたといいます。工場の上に住んでいたため、毎朝うどんを湯がく湯気とともに小麦の香りが立ち上っていました。その香りに包まれて育った原体験が、「自分はいずれこの仕事を継ぐのだ」という自然な意識につながっていたそうです。 

学生時代は生命科学を専攻し、興味の赴くままに学びを深めていました。生命科学の中でも遺伝子組換えなど食品分野に近い領域があり、「将来製麺所に戻るとしても決してマイナスにはならない」と考えていたと振り返ります。大学卒業後は就職という選択肢を取らず、迷いなく製麺所に戻る道を選びました。 

ただ、その決断に先代は反対したといいます。理系を専攻していたこともあり、大学院進学や一般企業への就職を勧められていたからです。それでも製麺所に入社した後は、まず現場に入り、餃子の皮づくり、製麺、ゆで麺など一連の工程を1年余りかけて徹底的に経験。さらに配送部や営業部にも携わり、製造から営業まで4年間で会社の全体像を身体で理解する期間となりました。 

その後、一度社外の企業へと転職します。時代の変化が大きく、会社のあり方を考えるうえで「自分の判断基準を広げる必要がある」と感じたためです。類似業界に行く選択肢もありましたが、「どうせ行くなら全く関係のない業界で自分を試したい」と考え、あえて異分野へ飛び込みました。 

再び製麺所に戻ったのは33歳のとき。転職先でも辞め時を見失っていた頃、父が病気になり、経営を続けることが難しい状況になったという連絡が入ります。「自分の会社でもある。とにかく戻らせてほしい」——その強い思いが、事業継承への決定的なきっかけになったと語ってくれました。 

事業継承後 

太陽製麺所_事業継承後

2019年1月に製麺所へ戻り、同年7月には社長へ就任。ほとんど引き継ぎのないままバトンを受け取る形となり、まさに“走りながら考える”船出でした。とはいえ、大学卒業後に製造から営業まで一通り経験していたことが大きな支えになったといいます。麺づくりの工程、餃子の皮、ゆで麺、配送、営業——会社の流れを身体で理解していたことが、経営の土台になりました。 

しかし、その翌年にコロナ禍が直撃します。売上は半分以下に落ち込み、「開き直りに近い感覚だった」と振り返ります。 

“どうにもならないことは、どうにもならない。やれる範囲で、できることをやるしかない” 

そう腹を括り、目の前の業務を一つずつ確実にこなすことに集中したのです。 

外食産業全体が大きな打撃を受ける中で、同社の回復は比較的早かったといいます。コロナによって店舗の営業スタイルが変わり、これまで提案しても受け入れられなかった効率化の取り組みが、ようやく前向きに検討されるようになりました。配送頻度の見直しなど、顧客にとってもマイナスにならない改善提案が受け入れられ、双方にとって良い変化が生まれたのです。 

「コロナ前なら揉めていた話も、環境が変わらざるを得ない状況が意識の変化を生んでくれた」と語ります。 

結果として、現在はコロナ前の業績を超え、成長軌道に乗りながら顧客からの要望にも応えられる体制が整いつつあります。 

これからの経営環境について

太陽製麺所_これからの経営環境について

特に業務用の製麺所を取り巻く環境は、跡継ぎ不足によって事業者が減少傾向にあります。インバウンド需要がどこまで続くかも不透明で、市場が今後大きく伸びていくかどうかは読み切れません。積極的に設備投資を行い、機械を増やして生産量を拡大していく企業も決して多くはないといいます。 

それでも、麺の需要そのものは確実に存在しています。海外から訪れる人々は日本のラーメンや中華料理を楽しみにしており、飲食店もその期待に応えるために努力を続けています。だからこそ、製麺所としては適切に安定供給できる体制を整え、さらに突発的な大口注文にも応えられる柔軟性を持つことが、これからの数年で非常に重要になると考えているそうです。 

一方で、業界全体を見ると、機械の老朽化が進んでいるにもかかわらず、十分な設備更新を行える企業は多くありません。潤沢な設備投資ができる製麺所は限られており、結果として供給力の差が広がりつつあります。 

「だからこそ、自社は安定供給と柔軟な対応力を両立できる体制をつくり続ける必要がある」 

そう語る姿からは、単なる事業継承ではなく、業界の未来を見据えた経営者としての視点が感じられました。 

王社長の言葉からは、単なる事業承継ではなく、“製麺所という業界の未来に見据えて”という強い意思が感じられたのではないでしょうか。「安定供給」と「柔軟な対応力」を両立できる体制をつくり続けること。太陽製麺所の取り組みは、同じように現場を支える多くの企業にとって、未来を考えるヒントになるはずです。 

今回の動画はこちらです。 

【70年の歴史を持つ製麺所】39歳社長の事業承継と製麺業界のこれから【太陽製麺所/経営者インタビュー・後編】