
今回の動画はBACcTチャンネル日本細菌検査の高橋が太陽製麺所株式会社の製造部課長の岡本さんにインタビュー形式で、HACCPと衛生管理の実務について迫ります。
麺の製造は一見シンプルに見えますが、実際には多くの工程が連動し、細かな管理と職人の技能が品質を支えています。今回の取材では、現場で働く方々の工夫やこだわりが随所に見られ、製品の安定した品質を実現するための仕組みがよく分かりました。最後まで読んでいただくことで、衛生管理のポイントをつかんでいただけるような内容になっています。
動画は主に6つの内容で構成されています。
①麺の製造工程~原料受け入れ~
②麺の製造工程~配合・ミキシング~
③麺の製造工程~複合・包装~
④麺の製造工程~手作業による丸め~
⑤工場の衛生管理について
⑥アレルゲンの管理について
では順番に見ていきましょう。
①麺の製造工程~原料受け入れ~

製麺は全8工程で進みます。最初のステップとなる「原料受け入れ」は、後工程の品質を左右する重要な管理ポイントです。
原料受け入れでは、まず粉袋の汚れ・破損の有無を丁寧に確認します。袋の状態は、異物混入や二次汚染のリスクに直結するため、外観チェックは欠かせません。併せて、納品伝票を記録管理し、ロット情報を確実に追跡できる状態にしていることも特徴です。
搬入時には、台車や粉袋に付着した埃を除去するためにエアレーションを実施します。物理的な除塵を行うことで、作業場への持ち込み汚染を防ぎ、衛生レベルを一定に保つことができます。このように、原料受け入れでは
- 記録管理によるトレーサビリティの確保
- エアレーションによる物理的除塵
を組み合わせることで、二次汚染を防ぎながら安全な製造スタートを切る仕組みが構築されています。
②麺の製造工程~配合・ミキシング~

配合・ミキシング工程は、麺の品質を左右する“生地づくり”の要となるステップです。レシピ通りに原料を計量し、均一な生地に仕上げることで、後工程の圧延・切り出し・食感にまで影響します。
まず、レシピに基づいた原料の計量を電子秤で行います。計量器はゼロ点校正を毎回実施し、さらに月1回の校正で精度を維持しています。配合を誤ると別製品になってしまうため、機器管理は必要以上に徹底しているのが特徴です。
計量した原料は、撹拌機を使って均一に混ぜ合わせる「ミキシング」工程へ進みます。ここでは、3つのことが意識されます。
- 撹拌速度
- 生地温度
- 特に水温
が製品の仕上がりに大きく影響するため、毎回記録を残しながら管理しています。
ミキシングの最後には、機械の周囲に付着した生地を掻き落とし、全量を確実に混ぜ合わせます。こうした細かな作業の積み重ねが、安定した麺品質につながっています。
③麺の製造工程~複合・包装~

複合から包装までの工程では、麺の食感・歩留まり・規格適合を安定させるために、4つの重要な管理ポイントが意識されています。段階的な圧延、厚みの均一化、重量管理、顧客仕様への対応など、いずれも品質を左右する要素です。
段階的圧延で組織破壊を防止
複合後の生地はローラーで圧延し、徐々に薄く伸ばしていきます。一度に強い圧力をかけるとグルテン組織が破壊され、切れやすい麺になるため、複数回に分けて段階的に圧延することが欠かせません。
この工程管理によって、麺のコシや弾力を安定させています。
厚みの均一化と麺サイズの確認
麺体の厚みは製品規格を決める重要な要素です。目標値に合わせて厚みを均一化し、横方向からの可視確認で微妙な変化をチェックします。また、圧延前には麺体を一定時間寝かせる「熟成」を行い、生地の状態を整えることで、後工程の切り出し精度を高めています。
切り出し時の重量確認と規格適合
成形(切り)工程では、麺の重量を複数ポイントで測定し、規格に適合しているかを確認します。重量不足はクレームに直結するため、細心の注意を払って管理されています。
この段階での重量管理が、製品の安定供給と顧客満足につながります。
玉数の自動設定と顧客仕様対応
丸め工程では、製品や顧客仕様に応じて2玉・5玉などの玉数を自動積算します。
ライン制御によって所定の玉数が揃うように調整されており、顧客ごとの仕様に柔軟に対応できる仕組みです。
最終的にはせいろに入れられ、包装工程へ進みますが、ここでも最終重量の確認を行い、規格通りの製品として出荷できる状態を整えています。
④麺の製造工程~手作業による丸め~

手作業による丸め工程は、機械ラインとは異なる“職人技”が求められる工程です。力加減や丸め方を少しでも誤ると成形不良につながるため、熟練した技能が欠かせません。見た目以上に繊細で高度な作業であり、経験によって習得される技術です。
機械ラインと流れ自体は同じですが、顧客の注文に応じて並べ方や成形方法を細かく調整できる点が手作業の強みです。玉の締まり具合、並べ方の美しさ、製品ごとの仕様など、細部まで人の目と手で整えることで、機械では再現しにくい仕上がりを実現しています。
このように、手作業による丸めは、
- 力加減の調整
- 形状の均一化
- 顧客仕様への柔軟対応
といった要素を組み合わせながら、品質を安定させる重要な工程として運用されています。
⑤工場の衛生管理について

麺工場では、製造ラインに水を使用できないため、乾式環境に適した衛生管理が求められます。落下粉の除去や舞い上がりの抑制、設備の分解清掃、従業員教育など、複数の対策を組み合わせて衛生レベルを維持しています。
作業前後には、まず落下粉の除去を行い、掃除機で吸引することで粉の舞い上がりを抑制します。水洗いができない環境だからこそ、粉塵管理が衛生の基本となります。さらに、アルコール噴霧による拭き取り清掃を実施し、これらを日常清掃として標準化しています。
設備については、空調機器などを定期清掃で分解し、細部まで洗浄しています。高所の天井部分は年2回、専門業者に依頼して清掃を行い、日常では届かない箇所の衛生状態を維持しています。
また、従業員に対しては衛生ルールの徹底を図り、安全委員会による現場パトロールを定期的に実施しています。作業着や手袋の適切な使用、着用ルールの順守などを確認し、衛生意識の維持・向上につなげています。
このように、乾式環境に合わせた清掃方法、設備の計画的なメンテナンス、従業員教育を組み合わせることで、工場全体の衛生管理を高いレベルで運用しています。
⑥アレルゲンの管理について

アレルゲン管理では、交差汚染を防ぐために専用ラインの運用・作業者教育・導線管理を組み合わせた多層的な対策が取られています。特に蕎麦は重篤なアレルゲンであるため、通常の衛生管理以上の注意が求められます。
まず、工場ではざる生専用のラインを設け、他製品と明確に区別して製造しています。物理的な分離によって、アレルゲンが他製品へ移行するリスクを大幅に低減しています。
蕎麦製造に携わる従業員には、専用の指導・教育を実施し、作業手順や注意点を徹底しています。専属担当でない場合でも、作業者の意識と標準化された手順によって、交差汚染リスクを最小限に抑えています。
また、導線の行き来が発生する場面では、エアによる粉の除去を行い、可能な限り付着粉を取り除く工夫がされています。作業者の移動や物品の持ち込みによるリスクを、物理的除去で補完している点が特徴です。
このように、
- 専用ラインによる物理的分離
- 作業者教育による意識向上
- 導線管理と除塵による交差リスク低減
を組み合わせることで、アレルゲン管理を高いレベルで運用していることが伝わってきます。
原料受け入れから包装までの一連の流れには、品質を守るための工夫が随所にあり、どの工程も「安定した製品を届けるために欠かせない役割」を担っていることが分かっていただけたのではないでしょうか?
弊社では、食品工場の衛生管理や品質管理に関するご相談を承っています。
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